記事 · 鴨料理
2026-09-21
鴨のローストに和とフランスの技法を重ねる理由
低温調理と根菜のピュレ、赤ワインのソースが一皿に収まるまで
工
工藤 典子
オーナーシェフ
2026-09-21
鴨のローストは、リヨンで覚えた料理だ。帰国後、日本の食材と出汁の考え方を重ねていくうちに、今の形になった。フランスの技法と和食の感覚が、一皿の中で静かに共存している。
低温調理の温度設定
鴨の胸肉は六十三度で四十分、湯煎で火を入れる。この温度帯だと、肉の繊維が締まらずに旨味が残る。取り出してから五分休ませ、皮面をフライパンで一分焼いて仕上げる。
最初の試作では七十度で試した。火が入りすぎて、肉が硬くなった。温度を下げるたびに、肉の質感が変わった。六十三度に落ち着いたのは、開業から半年後のことだ。
根菜のピュレの作り方
秋は里芋と蕪を合わせたピュレを使う。里芋は蒸してから裏ごしし、蕪は薄切りにしてバターで炒めてから合わせる。昆布出汁を少量加えることで、フランスのピュレとは少し違う、軽さが出る。
ソースの考え方
赤ワインのソースに、鴨の骨で取ったフォンを合わせる。最後に薄口醤油を数滴加える。醤油を入れると、ソースの輪郭がはっきりする。フランスのシェフに教えたら驚いていたが、理屈は同じだと思っている。旨味を足すという意味で。
ソースの仕上げに使う醤油の量は、毎回少し変わる。その日の鴨の脂の量と、ワインの酸の強さによって調整する。
この料理を作るたびに、リヨンの厨房の温度を思い出す。技法は変わっても、その感覚は残っている。
#鴨料理#低温調理#フレンチ和食#秋のコース