季節ごとに器を変えることで、料理の見え方が変わる
器を変えると、同じ料理が違って見える。これは感覚的な話ではなく、実際に試してみると分かることだ。白い磁器の皿に盛った料理と、土色の陶器に盛った料理では、食べる前の印象が変わる。
陶芸家との打ち合わせ
季節の変わり目に、近隣の陶芸家と打ち合わせをする。次の季節に使いたい食材の色や質感を言葉で伝え、それを踏まえた釉薬や形を提案してもらう。料理の話を器の言葉に翻訳する作業だ。
秋の器は、土色や錆色が多くなる。松茸の土瓶蒸しに使う器は、落ち着いた茶色の釉薬で、表面に少し凹凸がある。手に持ったときの重さが、料理の温かさを伝える。
同じ形は二度と届かない
依頼する器は量産品ではないため、同じ形が届くことはない。割れたり欠けたりしたとき、補充はできない。それが少し不便でもあり、面白くもある。
開業から八年で、器の数は少しずつ変わっている。最初に使っていた器のほとんどは、今はない。その代わりに、今の季節に合った器が手元にある。
器が料理に与える影響
白い皿は料理の色を引き立てる。土色の器は料理を温かく見せる。深い器は量が少なく見え、平たい器は量が多く見える。これを意識してコースの流れを組むと、食べ進めるリズムが変わる。
前菜は小さな器で少量から始め、徐々に器を大きくしていく。最後のデセールは、また小さな器に戻る。器のサイズがコースのテンポを作っている。
器を選ぶ時間は、料理を考える時間と同じくらい長い。どちらも、食べる人のことを考えている時間だ。