月替わりメニューを続けることの難しさと面白さ
2018年の開業から八年間、メニューを毎月書き直している。最初の一年は月に三度書き直したこともあった。食材が変われば料理が変わる。当たり前のことだが、実際にやり続けるのは思ったより体力がいる。
食材が決まってから料理を考える
多くの場合、料理のアイデアより先に食材が届く。仕入れ先から連絡が来て、今週はこれが良い状態だと聞いてから、何を作るかを考える。逆の順番、つまり料理を先に決めてから食材を探すと、どこかで妥協が生まれる。
秋は比較的やりやすい。松茸・鴨・栗・牡蠣と、使いたい食材が順番に届く。春は難しい。山菜の旬が短く、届いたと思ったら一週間で終わることがある。
失敗したメニューのこと
2021年の冬、牡蠣と白味噌を合わせたグラタン仕立てを出した。料理としては面白かったが、コースの流れの中で浮いた。前後の料理との温度と重さのバランスが合っていなかった。翌月、同じ食材を使って椀物に変えたら、自然に収まった。
失敗は記録している。同じ時期に同じ食材が来たとき、前年の記録を見返す。うまくいかなかった理由が書いてあると、次の判断が早くなる。
お客様の反応から学ぶこと
常連のお客様から「先月の鮎の方が好きだった」と言われることがある。そういう言葉は素直に受け取る。自分では気づかない視点が入っている。
一方で、毎月来てくださるお客様が「今月は何が出るか楽しみ」と言ってくれることが、月替わりを続ける一番の理由になっている。
メニューを書き直すたびに、前の月の料理が少し遠くなる。それが積み重なって、八年分の記録になっている。